免疫反応をプライミングするアジュバント
アジュバントは、ワクチン抗原に対する免疫反応を高めるために何十年も使用されています。
ワクチンは、将来の感染から身を守る特異的・持続的な免疫反応を誘発するために、病原体の一部を免疫系に導入するものです。
アジュバントは、特定の製剤において強力な免疫反応を誘導するために役立つ成分です。今日、最も広く使用されているアジュバントオプションはアルミニウム塩ですが、科学者やワクチン製造者は、使用可能なアジュバントオプションのレパートリーを増やすために絶えず技術革新を行っています。
Addressing the challenges of vaccine formulation
ワクチンアジュバントの歴史
物語は1920年、新しいジフテリアワクチンの研究をしていたフランスの獣医Gaston Ramonから始まります。それは偶然の発見でした。注射部位にひどい膿瘍ができた馬は、免疫反応も強かったのです。
彼は考えました。反応をこのように刺激するために、ワクチンに他に何か加えられないだろうか?
その仮説を確かめるため、彼は不活化毒素とデンプンまたはパン粉を併用し、注射部位に無菌の膿瘍を誘発しました。
実験は成功でした。Ramonの調合物を含むワクチンを投与された動物は、投与されなかった動物に比べて有意に多くの抗体を産生しました。したがって、それらがジフテリアの予防効果を高めたと考えられ、アジュバントという分野が確立されたのです。
アルミニウムアジュバントの発見
英国の免疫学者Alexander Glennyは、1926年にアルミニウム化合物のアジュバント効果を初めて報告しました。ジフテリアトキソイド(不活性毒素)の精製にアルミニウム塩を使用した後、Glennyはワクチン製造に硫酸アルミニウムカリウムを組み込みました。驚いたことに、アルミニウム塩沈殿物は、モルモットのトキソイドに対する免疫反応を著しく高めました。アルミニウム塩を添加すると、皮膚に局所的な炎症反応が生じ、ワクチンの成功率が高まりました。
このブレークスルーはワクチン開発を一変させました。この方法で調製されたワクチンは、ミョウバン沈殿ワクチンとして知られています。しかし、落とし穴がなかったわけではありません。ひどく不均一であるだけでなく、バッチの再現性に乏しく、抗原量が制御できませんでした。
長年の研究の結果、今日では、アルミニウムアジュバントの製造は最適化され、最高水準にまで進歩しています。
「ミョウバン」アジュバントが世界中で最も広く使われ続けているのも不思議ではありません。
サポニンベースのアジュバント
サポニンを主成分とするアジュバントに高い可能性があるとの認識は、フランスの獣医師Gaston Ramonがワクチンを研究していた1925年当時から持たれていました。Kristian Dalsgaard博士は1974年、Quil-A®として知られるキラヤサポナリアモリナの樹皮からサポニン混合物の精製に成功ました。Quil-Aはそれ以来、数多くの動物用ワクチンに高性能のアジュバントとして使用されています。
最終的に、サポニン混合物のある決まった画分を単離することで、ヒト用ワクチンへのサポニンの利用が可能になりました。1991年、Charlotte Kensil博士らは、QS-21を数種類の異性体からなるトリテルペノイドキラヤサポニンの成分として単離・命名しました。QS-21は、強化された免疫賦活特性と許容可能な反応原性のバランスが最適であり、すでに1つの商業化されたワクチンに使用されています。クローダではQS-21も提供しており、研究での使用が可能です。
アジュバントの使用について
アジュバントは、免疫反応を促進、延長、増強するために、ワクチンの設計に使用されます。ワクチンに対する免疫反応を、早期、長期持続的、効率的に起こすために役立ちます。これによってワクチンの有効性が高まり、ワクチン接種の対象である疾患に対して高い予防効果が得られます。
アジュバントのメリット
アジュバントシステムがあることによって、アジュバント化されていない抗原のみでワクチン接種を行う場合よりも少ない注射回数、または少ない投与量で、同レベルの免疫防御を達成できます。
ワクチン製剤の中には、最適な抗原の送達・提示が得られず、ワクチンの有効性が低いものもあります。したがって、より良いワクチンを作るためには、アジュバントシステムの多様なレパートリーが必要です。
アジュバントはどのようにしてワクチンの効果を高めるのでしょうか?
アジュバントシステムは、ケモカインシグナルを活性化する、また、樹状細胞やTヘルパー細胞(Th1、Th2、Th17)といった特定の免疫細胞を標的にするなどにより、免疫反応のさまざまな段階で免疫を刺激します。
とはいえ、現在の研究は、アジュバントシステムの正確な作用機序の解明を目指して進められています。
アジュバントの種類
アジュバントシステムは、その物理的・化学的特性、または機能によって分類することができます。これらの機能は、ワクチンデリバリーシステムや免疫賦活剤の機能を果たす可能性があります。
注目すべき例としては、アルミニウム塩、オイルエマルション、サポニン、TLR作動薬などがあります。
すべてのワクチンにアジュバントが含まれているか
不活化したウイルスまたは細菌をベースにしたものなど、すべてのワクチンにアジュバントが含まれているわけではありません。それでも、最新のワクチンのほとんどが、アジュバントシステムを採用しています。アルミニウム塩は、ほぼすべてのDTPワクチンに、また、Hep-A、HPV、炭疽病ワクチンにも含まれています。
最近の手強い病原体に対するワクチンには、特異的TLRアゴニスト免疫刺激物質(MPLA)を含む脂質デリバリーシステムが含まれています。例えば、AS01は水痘帯状疱疹に対するワクチンに、AS04はHPVワクチンに使用されています。
新規のアジュバント技術
現代のワクチン学はここ数十年で飛躍的な成長を遂げ、防護をより幅広く誘導し、種々の条件に対処できる、新しい技術や改良された技術へとつながっています。次世代のワクチンではとりわけ、CAF01やCAF09bのようなリポソームアジュバントや、TLR4アゴニスト(PHAD、3D-PHAD、3D(6-acyl)-PHADなど)に焦点が当てられるでしょう。
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