転移性前立腺がんワクチンの新たな有望な結果
CAF09bは、特に腹腔内投与した際に細胞傷害性T細胞応答を刺激する能力が高いことが知られており、がん免疫療法の候補として優れています。研究によれば、CAF09bは、がんワクチンの臨床試験で最も使用されるアジュバントであるpoly(I:C)よりも安全性があり、安定性も優れていることが実証されています。Frontiers in Immunologyに発表された新しい研究1では、ホルモン感受性前立腺がん患者に対するワクチンの有望な結果が報告されました。研究者らは、新規アジュバントであるCAF®09bとBcl-XL-ペプチドを含むワクチン製剤が、強力なCD4+T細胞およびCD8+T細胞の応答を誘発できることを実証しました。このチームは、この初見が前立腺がん治療の未来に影響を与えると考えています。クローダのグローバル研究開発責任者であるDennis Christensenは、「このデータは、CAF®09bが抗原特異的がん免疫療法のアジュバントとして有望であることを示しています」と述べています。
世界的に、前立腺癌(PC)は、男性における診断が2番目に多いがんであり、がん関連の死因として5番目に多くなっています。転移性疾患に対する現在の治療選択肢は限られており、アンドロゲン遮断療法が奏功しない場合の予後は不良となります。これに伴って、新しい治療法が切実に求められています。
がん免疫療法
がん免疫療法の分野では目覚ましい進歩があり、さまざまなタイプのがんにおいて有効性が検討されています。免疫化によって腫瘍特異的T細胞応答を増幅する治療ワクチンは、特に注目されています。腫瘍特異的抗原および腫瘍関連抗原(TAA)は、PCで多く発現していることが明らかになっています。さらに、PC患者では特定の前立腺特異的抗原に対して特異的なT細胞が末梢血中にみられることが多く、PC特異的T細胞免疫をサポートする治療ワクチンの可能性を示しています。
TAAは健康な細胞にも存在しますが、一般にがんでは増加します。そのため、TAAは有用な標的となり、ペプチドベースのワクチンはそれを利用しています。このようなワクチンは通常、TAA由来のアミノ酸配列で構成されています。
ペプチドのがんワクチンは、効果的な抗腫瘍免疫のために、細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化するCD8+エピトープおよびCD4+エピトープの存在を必要とします。さらに、CTLのエフェクター機能を維持するには、ヘルパーT細胞の活性化が必要です。
前立腺がんにおけるBcl-XLの過剰発現
研究者らは、PCにおいて過剰発現する抗アポトーシスタンパク質、Bcl-XLについて調査しました。Bcl-XL発現の増加は、化学療法に対する反応性の低下および予後不良と関連しています。 前臨床研究では、がん患者はBcl-XLタンパク質に由来するエピトープに対してT細胞応答を自然に起こす可能性があることが実証されています。このようなT細胞は、Bcl-XLを過剰発現しているがん細胞を直接死滅させることもできます。Bcl-XLを抑制するとアポトーシスが促進され、それによってがん性細胞が化学療法や放射線療法に感作されることが、研究で証明されています。逆に、Bcl-XLの発現量が増加すると、多剤耐性になる可能性があります。
Bcl-XL-ペプチド-CAF09bワクチン接種
このワクチン製剤に使用されるBcl-XL_42ペプチドには、アミノ酸が42個含まれています。このような長めのペプチドは、主要組織適合性複合体I(MHC-I)に直接結合することができず、抗原提示細胞(APC)で処理しなければならないため、より強固で多様な免疫応答を誘導することができます。その結果、CD4+T細胞とCD8+T細胞の両方の刺激に寄与します。
研究者らは、Bcl-XL_42ペプチドを新規リポソームワクチンアジュバントであるCAF09bに添加しました。CAF09bは、脂質界面活性剤(DDAおよびMMG)とTLR3作動薬のpoly(I:C)から構成されています。
前臨床モデルでは、CAF09bが免疫反応をタイプI/CD8+T細胞反応にシフトさせる優れた能力を持つことが実証されています。CAF09bはAPCによるペプチドの取り込みを増加させ、APCを活性化して交差提示と炎症促進性シグナル伝達を刺激し、これによってワクチン特異的CD4+T細胞とCD8+T細胞を活性化します。
本研究について
今回の研究では、ホルモン療法を開始する予定のホルモン感受性PCの成人患者20名を対象としました。チームは患者をA群とB群の2群に分け、A群には3種類のワクチンを筋肉内注射(IM)した後、腹腔内注射(IP)しました。グループBには逆の順序でワクチンを接種しました。ワクチンによって誘導された免疫応答は、ELISPOTとフローサイトメトリーを用いて分析しました。
全般的に、このワクチンは安全で忍容性があることが示されました。最もよくみられる副作用は、疲労と注射部位の軽度疼痛でした。疲労は、転移性前立腺がんによく使用されるビカルタミド療法との併用によっても説明できるかもしれません。
ELISPOT分析では、両群とも有意なBcl-XL_42特異的T細胞応答を示しました。それにもかかわらず、患者はIM注射後よりもIP注射後の方がより強く、より早い免疫応答を示したことから、IPの投与経路がCD8+T細胞応答につながるより優れた抗原提示を導くという示唆が裏付けられました。さらに研究者らは、T細胞活性化マーカーCD107aとCD137の増加を明らかにしました。
最後に
最終的に、これらの知見は、Bcl-XL-ペプチド-CAF09bワクチン接種がホルモン感受性PC患者にとって安全かつ実行可能であることを示しました。このワクチンはCD4+T細胞およびCD8+T細胞の応答を誘発する能力を有し、IP投与でより高い効力を示します。
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